「最近、ハイエースの盗難が減ったって聞くけど、本当なの?」

2024年の盗難車ランキングでハイエースはワースト7位となり、全体順位は下がってきているよ。
しかし、ハイエースの順位が下がったからといって安全になったわけではありません。
なぜなら、近年は、レクサスやランドクルーザーといった、より高額な車種が窃盗団のメインターゲットになっていて、ハイエースの順位が下がっているだけです。無対策のハイエースは依然として狙われやすい状況に変わりはありません。
この記事では、近年の盗難件数の推移や、今なお狙われ続ける理由、盗難の新手口「ゲームボーイ」などを徹底解説。
この記事を読めば、あなたの愛車を守るための最適なセキュリティ対策がわかります。あわせて、筆者のハイエースのセキュリティ対策も紹介します。



ぼくのセキュリティ対策も教えるよ!
ハイエースの盗難は本当に減ったのか?最新データを徹底分析
車両盗難はほぼ毎日といっていいほど発生しており、近年ではSNSで、盗難被害の拡散希望といった書き込みを多くみかけます。
盗難車両TOP10の常連でもあるハイエース。「ハイエースの盗難は本当に減ったのか?」は、ハイエースオーナーとしてはとても気になるトピックスですよね。
警察庁によれば、令和7年(2025年)上半期の、ハイエースの車両別盗難件数は97台で全体7位となります(警察庁:令和7年上半期における車名別盗難台数の状況)。
ハイエースの盗難件数の推移


結論からいうとは、ハイエースの盗難件数は過去の最悪期に比べれば「相対的に減少」しています。しかし、これは決して「安全になった」という意味ではありません。
日本損害保険協会の調査によると、かつてハイエースは2007年から2013年まで車両別盗難件数ランキングでトップでした(日本損害保険協会:自動車盗難事故実態調査)。
2012年、ハイエース200系3型後期からイモビライザーが全車標準装備となり、その後ハイエースの盗難件数は減少傾向に向かいます。
2023年(令和5年)・2024年(令和6年)の、ハイエースの車両別盗難台数(187台・170台)はいずれも全体の5位となっています(警察庁:自動車盗難等の発生状況等について)。
ハイエースの車両別盗難順位が下がった理由:より危険な車が増えただけ
ハイエースの車両別盗難ランキング低下の背景には、レクサスやランドクルーザーといった、さらに高額な車種が窃盗団のメインターゲットとなり、ランキング上位を独占するようになったという事実があります。



安全になったのではなく、「もっと狙われやすい車が増えた」というだけ。
全国で7番目に盗まれやすい車であるという事実に変わりはなく(2025年上半期時点)、依然として極めて盗難リスクが高い車種であることは間違いありません。
さらに深刻なのは、メーカー純正のイモビライザーが標準装備されているにもかかわらず、依然として盗難ランキングの上位にいるという事実です。
ハイエースが狙われる理由:圧倒的な海外需要とセキュリティの脆弱性


ハイエースの盗難件数が相対的に減少しているにもかかわらず、窃盗団のターゲットであり続けるのには、明確な理由が存在します。
圧倒的な海外需要:



ハイエースは世界中で大人気!
ハイエースは、日本だけでなく海外でも人気のある車種になります。「壊れない、修理しやすい、どんな悪路でも走る」という神話的な評価により、新車はもちろん、中古車や部品の需要が非常に高いです。
ハイエース専門店の情報によると、盗まれたハイエースのほとんどはヤードと呼ばれる場所へ運ばれ、パーツに分解された後、コンテナに詰められて海外へ売却されるとのこと。年間の被害総額は1億円相当にも及ぶといわれています。
セキュリティの脆弱性
先述したようにイモビライザーが標準装備されたとはいえ、レクサスやランドクルーザーの最新セキュリティと比べると、ハイエースのセキュリティは弱いと言わざるを得ません。最新セキュリティを備えたレクサスやランドクルーザーでさえ盗難にあっています。
市場に流通している絶対数が多い上にセキュリティも甘いことが、窃盗団のターゲットとされやすい理由の一つになります。
ハイエース盗難の主な手口:「ゲームボーイ」とは?
自動車メーカーも新たなセキュリティ機能を導入していますが、窃盗団も、それを破るための新たな手口を生み出します。ここでは、近年で主流とされている盗難手口を詳しく解説します。
- ゲームボーイ
- CANインベーダー(CAN : Controller Area Network)
- リレーアタック
- イモビカッター
- 物理的破壊(原始的だが効果的)
ゲームボーイ(GAME BOY)


ゲームボーイとは、近年で史上最悪ともいわれる盗難ツールの俗称です。



あのGAME BOY?
違います。もともと鍵専門業者向けに販売されていた、緊急時の解錠用ツール「キーエミュレーター」が盗難に悪用され、通称「ゲームボーイ」と呼ばれているようです。
車両と通信を行い、車両からキー情報を読み出して、純正キーを複製できてしまう最恐の盗難ツール。車両側は純正キーと認識してしまい、純正のセキュリティは突破されてしまいます。
CANインベーダー


高級車の盗難手口としてもよく耳にするのが「CANインベーダー」です。CANとは、自動車内部のコンピュータを繋ぐネットワークの一つ。このCANに不正アクセスする手口が「CANインベーダー」です。
窃盗犯は、フロントバンパーの隙間やタイヤハウス内などから特殊な装置をCAN配線に接続し、ドアロック解除やエンジン始動を指示する偽の信号を送り込みます。
車両側は純正キーからの信号と誤認するため、純正セキュリティは作動しません。わずか数分で、まるで自分の車であるかのように静かに走り去ることができてしまう、極めて巧妙かつ悪質な手口です。
リレーアタック


リレーアタックは、スマートキー搭載車を狙った手口です。スマートキーから常に発信されている微弱な電波を悪用(増幅、リレー)するのが、リレーアタックです。
本来スマートキーは、その電波が微弱なため車両の近くでないと認識されません。
リレーアタックは、家の中にあるスマートキーの電波を特殊な受信機で拾い、その電波を増幅して別の中継器へ送信して車両までスマートキーの電波を届けるという手法です。そのためリレーアタックは、一人がスマートキーの電波を拾い、別人が車両の近くで待機するといった複数人での犯行となります。
自宅の玄関先やリビングの窓際にキーを置いている方は、リレーアタックを受ける危険性があります。
イモビカッター
「イモビカッター」は、自動車内部のコンピュータに直接アクセスし、エンジン始動を制御しているイモビライザーの機能を強制的に無効化するツールです。
もともとはディーラーや整備工場での整備の際に、一時的にイモビライザーの機能を停止させることを目的として利用されていたツールでしたが、これが盗難に悪用されてしまいました。
「イモビカッター」は、10年以上も前から使われていますが、依然として使われている電子的な攻撃手口です。
物理的破壊
電子的な手口が主流となる一方で、窓ガラスを割って車内に侵入するという原始的な方法も後を絶ちません。
これは主に車内の金品や工具を狙う「車上荒らし」で使われますが、車内に侵入してから車両診断ポート(OBD-IIポート)にアクセスし、そこからスマートキーを複製する手口の第一段階として行われることもあります。
ハイエースの盗難が減っても対策が必要な理由
ハイエースの純正セキュリティ
機能 | 概要 | 限界・弱点 |
---|---|---|
イモビライザー | 正規キーのIDと車両IDを照合し、一致しないと始動不可。 | CANインベーダーやイモビカッター(ID情報を強制的に書き換える装置)といった手口の前では無力化される危険性がある。 |
オートアラーム | 不正開錠・侵入で警報・威嚇。抑止効果に寄与。 | CANインベーダーは警報自体を鳴らさせずに解錠する。また、プロの窃盗団は短時間でアラームを解除する方法を熟知している。 |
ハイエースの純正セキュリティはあくまで標準的な防犯対策であり、その主な目的は車上荒らしや素人レベルの盗難を防ぐことにあります。
これまで解説してきた、プロの窃盗団が用いる最新の専用機器や手口に完全に対応することは現実的に難いのが実情です。
そのため、ハイエースの盗難件数が減っているとはいえ、セキュリティ対策は依然として必要になります。
盗難で狙われやすい場所やシチュエーション


プロの窃盗団は常に周囲の状況を冷静に観察し、リスクの低い場所や時間帯、状況を狙っています。
狙われやすい場所
盗難場所で最も多いのは自宅駐車場、次いで契約・コインパーキングなど。夜間や人目が少ない場所は特に危険度が増します。
- 自宅駐車場:「自宅だから安心」という安心感が最大の隙になります。夜間は人通りが絶え、防犯カメラやセンサーライトがなければ、窃盗団にとっては格好の作業場所となってしまいます。
- 契約駐車場や月極駐車場:管理人が常駐していない場合が多く、夜間は利用者の出入りも少ないため、窃盗団が時間をかけて犯行に及びやすい環境です。
- 商業施設やコインパーキング:不特定多数の車両が出入りするため、不審な人物や車両が紛れ込みやすく、下見も容易です。特に、場内の隅や照明が暗い場所は危険度が高まります。
狙われやすいシチュエーション
ハイエースの盗難状況としてよくあるのは、荷物の積み下ろし中です。荷物の積み下ろしで「ほんの少しだけ」とエンジンをかけたまま、あるいはスマートキーを車内に置いたまま車から離れる瞬間が非常に危険です。
窃盗団はそうしたドライバーの油断や一瞬の隙を絶対に見逃しません。
おすすめのセキュリティ対策を紹介
対策の種類 | 具体的な製品・方法 | 主な効果と役割 |
---|---|---|
電子セキュリティ(万能型) | CLIFFORD(クリフォード)、Panthera(パンテーラ)、Grgo(ゴルゴ)、VIPER(バイパー)など | 車両への接近や異常を検知し、大音量のサイレンで威嚇・撃退。同時に手元のリモコンへ異常を通知する。 |
電子セキュリティ(特化型) | IGLA(イグラ)、KEYLESS BLOCK(キーレスブロック)など | CANインベーダーやリレーアタック対策の切り札。不正なエンジン始動をデジタル制御で完全にブロックする。 |
物理ロック | ブレーキペダルロック、ハンドルロック、タイヤロック | 視覚的な威嚇効果と、物理的に操作を不可能にすることで犯行時間を大幅に稼ぐ。窃盗団が最も嫌う対策の一つ。 |
追跡・記録 | GPS追跡装置、 ドライブレコーダー(駐車監視機能付き) | 万が一盗難された場合の追跡・回収率を高める。また、犯行の様子を記録し、犯人逮捕の証拠とする。 |
Panthera(パンテーラ)は最高峰の警報システム


数多く存在するカーセキュリティシステムの中でも、性能、信頼性、そして拡張性において最高峰と評されるのが、ユピテル社製の「Panthera(パンテーラ) Zシリーズ」です。
パンテーラの最大の特徴は、独自の「スーパーアルゴリズム」による極めて高精度な異常検知能力です。弱い衝撃(猫が乗るなど)と強い衝撃(ガラスが割られるなど)を正確に識別し、誤報を最小限に抑えつつ、本当に危険な状況だけを警告・警報します。
さらに、オプションのセンサーを追加すれば、車への接近(マイクロ波センサー)や車体の傾き(傾斜センサー)、音(音感センサー)まで検知可能です。車両に異常が発生すると、大音量のサイレンで威嚇すると同時に、手元のアンサーバックリモコンに詳細な情報(どのセンサーが反応したか)が通知されるため、離れた場所にいても即座に状況を把握できます。
もちろんCANインベーダーによる不正なドア開錠も検知し、即座に警報を作動させます。価格は工賃込みで高価になりますが、その投資に見合うだけの絶対的な安心感と、プロの窃盗団に対する強力な抑止力を提供してくれます。
IGLA2による乗り逃げ防止


CANインベーダーやリレーアタックといった電子的な攻撃への対策として、現在最も効果的かつ信頼性の高い製品が、ロシアのAUTHOR ALARM(オーサーアラーム)社が開発したデジタルイモビライザー「IGLA2(イグラ)」です。
IGLA2は、車両のデジタル通信バス(CAN-BUS)と完全に融合し、エンジン始動の許可プログラムに直接介入します。これにより、オーナーだけが知る正しい認証(車両の既存ボタンを特定の順番で押すPINコード入力、または専用の認証キーフォブの所持)以外でエンジン始動された場合、シフトチェンジと同時にエンジンが停止し、乗り逃げされることを防止します。
スマートキーとセットで持ち歩く専用の小型キーフォブが車両の近くになければ認証が通らないため、安心して車を離れることができます。
同じくAUTHOR ALARM社のKEYLESS BLOCKと組み合わせることで強固なセキュリティを実現できます。KEYLESS BLOCKは、リレーアタック対策として開発された製品で、ドアロックと同時にスマートキーとの通信が遮断される仕組みになっています。
ブレーキペダルロックによる物理的防犯


最新の電子セキュリティと合わせて導入を検討したいのが、原始的でありながら非常に効果の高い物理的な盗難防止グッズです。中でも、「ブレーキペダルロック」は、強固な防犯性能と犯人への視覚的な抑止効果を兼ね備えた、コストパフォーマンスに優れるアイテムです。
ブレーキペダルロックは、頑丈な金属製のバーでブレーキペダルとハンドルなどを連結・固定し、ペダルを踏み込めないようにするものです。ハイエースでは、ステッキ型のサイドブレーキが採用されていますが、このサイドブレーキが解除できなくなります。
電子セキュリティを破る高度な知識を持った犯人であっても、屈強な金属を破壊するには大きな音と時間、そして手間がかかります。こうしたアナログな対策を一つ加えるだけで、防犯レベルは劇的に向上します。
その他、日頃から防犯意識を持つことも大切
見落としがちなのが、SNSでの情報発信です。愛車の写真をSNSに投稿する際は、背景から自宅や駐車場所が特定されないよう細心の注意を払いましょう。
また、「今日から海外旅行」といった投稿は、長期間車が無防備になることを公言しているのと同じです。窃盗団はインターネット上でも標的の情報を収集していることを忘れてはいけません。
これらの対策を一つでも多く実践することで、セキュリティの穴をなくし、愛車が狙われるリスクを限りなくゼロに近づけることができます。
筆者が選んだのは「Panthera Z105」




筆者のセキュリティ対策を紹介します。



「Panthera Z105」です。
ハイエースを購入する際、セキュリティ対策をどうするか、かなり迷いました。電子セキュリティなのか、物理的セキュリティなのか、あるいは組み合わせるべきなのか。盗難手口を調べていると余計に心配になり、あれもこれも対策が必要な気持ちになりました。
いくつかのカーセキュリティ専門店に相談した際に、あるスタッフさんから「プロの窃盗団に『この車は盗むのに時間がかかりすぎる』『捕まるリスクが高い』と思わせることが重要だよ」とアドバイスをいただきました。
プロの窃盗団はレクサスやランドクルーザーといった高級車であれば多少のリスクを冒すかもしれませんが、その辺にいくらでも走っているハイエースならリスクの高い車両は狙いません。
そのアドバイスをもとに最終候補に残ったのが、
- CLIFFORD
- Panthera
- IGLA2、KEYLESS BLOCK
- ブレーキペダルロック
です。そして、ここからは消去法で選びました。
まず唯一の物理ロックである「ブレーキペダルロック」ですが、盗難防止対策として魅力的ではあったものの、専用キーでの施錠・解錠操作が毎回必要になることが筆者の性格には合わないことから除外しました。施錠・解錠操作が苦にならないユーザーにとっては、オススメのセキュリティ対策になります。
次に、IGLA2とKEYLESS BLOCKの組み合わせですが、IGLA2はハイエースにも適合していましたが、KEYLESS BLOCKが残念ながら適合していませんでした。IGLA2だけでは心許なかったため、候補から除外となりました。適合車種のオーナーさんであれば、こちらもオススメのセキュリティ対策となります。
最後はCLIFFORDとPantheraの二択となり、性能的にはどちらも申し分ない製品です。ただし信頼できるセキュリティ専門店でインストールしてもらわなければ、セキュリティ性能は100%発揮されません。最終的には、「このお店にお願いしたい」と思った専門店を選び、その専門店で扱っていたのがPantheraだったことから、Pantheraになりました。



専門店選びも重要だよ!
5分ルール
あるデータによれば、窃盗犯は侵入や解錠に5分以上かかると判断した場合、その車を諦める傾向にあると言われています。この心理を利用し、犯行に時間をかけさせる戦略が効果的です。
ハイエースの盗難が減った今こそ万全な対策を
この記事では、ハイエースの盗難が減少傾向にあるという事実と、その裏で巧妙化する手口、そしてそれに対抗するための具体的な防犯対策について詳しく解説してきました。
盗難件数が減ったという言葉に油断せず、むしろ「プロ以外は手を出せなくなった」と認識を改め、これまで以上にしっかりとした対策を講じることが、あなたの愛車と財産を守る唯一の道です。
【最終チェック】愛車を守るための重要ポイント
- ハイエースの盗難は減少傾向だが、プロの窃盗団による被害は続いている。
- 狙われる理由は「高い耐久性」と「旺盛な海外需要」であり、この魅力は今後も変わらない。
- 現在の主流手口は純正セキュリティを無力化する「CANインベーダー」である。
- 対策の基本は、電子(警報・始動妨害)と物理(ロック)を組み合わせた「多重防御」。
- 最高峰の警報システム「パンテーラ」は侵入を許さず威嚇・通知する。
- 最強の始動妨害装置「IGLA2」は侵入されてもエンジンをかけさせない。
- 「ブレーキペダルロック」や「ハンドルロック」は、時間を稼ぎ犯行を諦めさせる効果が高い。
- GPS追跡装置や駐車環境の整備も、リスクを低減させる上で非常に重要。
- 「盗難が減ったから大丈夫」という油断が最も危険。今この瞬間から対策を始めることが、未来の後悔を防ぐ最善策となる。